研究概要

当研究室では、ヒトの記憶(特にエピソード記憶)機能の脳内メカニズムについて、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などの脳機能イメージング法、脳損傷患者を対象とした神経心理学法、健常者を対象とした実験心理学法などの手法を組み合わせることで研究を進めています。具体的には以下の研究を進めています。

1. ヒト記憶の基礎的過程とその脳内機構

ヒトのエピソード記憶に重要な脳領域として、海馬や海馬傍回を含む側頭葉内側の構造の重要性が指摘されています。近年、この側頭葉内側面の構造の違いによって機能が乖離する可能性が指摘されてきています。私たちは、側頭葉内側面が記憶過程に及ぼす影響について、「連合」や「文脈」の情報処理に着目して研究を進めています。

2. 情動や報酬、社会的認知がヒトの記憶過程に及ぼす効果の脳内メカニズムの研究

嬉しい事や悲しい事などの情動的な出来事の経験の記憶は、そうでない日常的な出来事と比較してより良く記憶されることが知られています。また、報酬を得たり罰を避けたりする動機づけによっても、ヒトの記憶は促進されます。私たちはこのような情動と記憶、報酬と記憶との関連を担う脳内メカニズムの研究を進めています。また、他者との関わり合いなどの社会的認知と記憶機能との関連についても研究を行っています。

3. 加齢がヒト記憶過程に及ぼす影響と脳内メカニズムの加齢変化についての研究

年齢を重ねるにつれてヒトの記憶機能は影響を受けることが知られています。しかしながら、そのような加齢に依存したヒト記憶機能の変化の原因となる脳内機構については、十分に理解が進んでいません。私たちは、この加齢に依存した記憶機能の変化とその脳内機構について研究を行っています。

4. 高齢者における記憶機能と生活習慣との関連についての研究

近年、運動や食生活などの生活習慣がヒトの記憶機能に影響を与える可能性が指摘されてきています。そこで、私たちは高齢者を対象として生活習慣と記憶機能との関連についての調査を行い、「記憶機能の維持・向上に資する生活習慣が何か」、を明らかにしたいと考えています。